ページID:4860更新日:2018年3月19日
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審問が終結すると、公益委員会議が開かれ、参与委員の出席を求めて意見を聞きます。次に、公益委員による合議に入ります。合議では、審査の結果に基づいて事実を認定し、不当労働行為に該当するかどうかの判断を行い、命令の内容を決定します。
申立てが不当労働行為に該当すると判断したときは、その不当労働行為を排除するのに最も適切な内容の命令(救済命令)を決定し、逆に、申立てが不当労働行為に該当しないと判断したときは、申立てを棄却する旨の命令(棄却命令)を決定します。
実務上は、申立てのすべてについて不当労働行為の成立を認め、しかも、これに係る請求する救済内容をすべて認めた命令を救済命令(又は全部救済命令)といい、申立ての一部について不当労働行為の成立を認め、これに係る請求する救済内容の一部を認め、その他を棄却又は却下したもの、あるいは、申立てのすべてについて不当労働行為の成立を認めたが、これに係る請求する救済内容の一部しか認めないものを一部救済命令といっています。
合議の結果、命令内容が決定されると、命令書(原本)が作成されます。命令書には、次の事項が記載され、会長が署名又は記名押印します。
「主文」には、請求する救済内容を全部若しくは一部を認容する旨及びその履行方法、又は申立てを棄却する旨の命令内容が記載されます。
「理由」は、通常、「認定した事実」と「判断」に分けて記載され、末尾に「法律上の根拠」が記載されます。
命令書が作成されると、当事者に命令書の写しを交付します。命令書の写しの交付によって当該命令は効力が生じます。
命令書の写しの交付は会長が期日を定めて当事者に直接手渡します。この期日を定めたときは当事者双方に通知します。また、命令書の写しは郵送で交付することもできます。この場合、配達証明の書留郵便によって当事者に送付します。この場合には、その配達があった日が交付の日とみなされます。
なお、当事者が労働組合の場合には資格審査決定書の写しも交付されます。
都道府県労働委員会が命令書の写しを交付するときは、当事者に対して中央労働委員会に再審査の申立てができること等を教示しなければなりません。山梨県労働委員会では、命令書の写しを交付するときは、「命令書写し交付書」を交付し、これに教示事項を表示しています。
不当労働行為の救済申立ては一定の要件(申立要件)を備えていなければなりません。申立要件を備えていない申立ては、その内容について審査することなく門前払いされます。これが却下です。つまり、却下とは、労働委員会が申立てを受けたのち、その申立てが申立要件を欠いていること(却下事由に該当すること)を理由に、申立内容について審査を行うことを拒否する処分です。
却下事由(申立てが却下される場合)は次のとおりです(労働委員会規則第33条第1項)。
(1)申立書の要件を欠き補正されないとき
(2)不適格組合の申立てであるとき
(3)申立て((4)の場合を除く。)が行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過したものであるとき
(4)地方公営企業等の労働関係に関する法律第12条による解雇についての申立てが当該解雇がなされた日から2カ月を経過した後になされたものであるとき
(5)申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき
(6)請求する救済の内容が法令上又は事実上実現不可能であることが明らかなとき
(7)申立人の所在が知れないとき、申立人が死亡もしくは消滅し、かつ申立人の死亡もしくは消滅の日の翌日から起算して6カ月以内に申立てを承継するものから承継の申出がないとき、または申立人が申立てを維持する意思を放棄したものと認められるとき
却下は公益委員会議の決定によって行われます。「決定書」が作成され、決定書の写しが当事者に交付されます。決定書の記載事項及び交付の方法は命令書の場合に準じています。
都道府県労働委員会の命令・却下に不服のある場合は、次により再審査の申立てや取消訴訟の提起をすることができます。
(1)中央労働委員会への再審査の申立て
当事者双方は、命令書(写)又は決定書(写)を交付された日から15日以内に、中央労働委員会にその取消し又は変更を求めて再審査の申立てをすることができます。
(2)地方裁判所への取消訴訟の提起
申立人(労働者又は労働組合)は、命令書(写)又は決定書(写)を交付された日(処分のあったことを知った日)から6カ月以内に地方裁判所に対し命令又は決定の取消しの訴えを提起することができます。申立人(労働者又は労働組合)は、再審査の申立ても、取消しの訴えの提起も併行して行うことができます。
被申立人(使用者)は、中央労働委員会に再審査の申立てをしない場合に、命令書(写)を交付された日から30日以内に地方裁判所に対し命令の取消しを求める訴えを提起することができます。
労働委員会が発した救済命令は、当事者が法定期間内に再審査の申立ても行政訴訟の提起を行わないか、あるいはこれらの不服申立ての手続きがすべて終了した場合に確定します。
救済命令が行政訴訟を経ずに確定した場合、これに従わないと、50万円(命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の日の翌日から起算して不履行の日数が5日を超える場合にはその超える日数1日につき10万円の割合で算出した金額を加えた金額)以下の過料が科せられます。
救済命令が確定判決によって支持された場合、これに従わないと、1年以下の禁錮若しくは100万円以下の罰金、又はこれらが併科されます。これは、単に行政機関の処分に対する違反ではなく、裁判所における確定判決による支持があったものに対する違反であるという点が重視され、禁錮又は罰金という刑罰が科せられることになっています。