ページID:4864更新日:2024年2月9日
ここから本文です。
山梨県労働委員会では、話合いによる個別的労使紛争の解決を支援するためにあっせんを行っています(平成13年10月1日から開始)。
そもそも、労働委員会は、労働組合法・地方自治法に基づき、集団的な労使関係における不当労働行為の審査、労働争議の調整等を行う機関として設置されています。したがって、労働委員会が個別的労使紛争の「あっせん」を行うには、何らかの根拠が必要です。
この点、山梨県庁は、労働行政の施策として個別的労使紛争のあっせん制度を確立(「個別的労使紛争に係るあっせんに関する要綱」を制定)し、その事務を地方自治法第180条の2の規定に基づき、山梨県労働委員会に委任しました。これにより、山梨県労働委員会が、個別的労使紛争のあっせんを行っています。
個別的労使紛争については、企業内において不満・苦情の段階でこれを未然に防止するとともに、紛争が生じた際には早期に労使で話し合い、自主的に解決されることが理想です。
しかし、企業内で不満・苦情を解決する仕組みが十分に整備されていなかったり、苦情処理機関等の制度があっても有効に機能していなかったりすることがあります。また、紛争の経緯や原因は様々で、当事者双方が法制度に不知であったり、当事者同士の感情的な対立であったり、解雇の問題など労使の利害関係の決定的な対立であったりするなど、自主的な解決が困難な場合も多々あります。
このような場合、まずは、山梨県労働委員会にご相談ください。
紛争の内容をお聞きしたうえで、情報提供、助言、関係機関の紹介等を行います。
多くの場合、相談することによって、問題点や解決方法が明確になっていきます。
個別的労使紛争を解決する方法としてあっせんを希望する場合には、あっせんを申請することになります。
ただし、紛争の中には、労働基準法違反など労働基準監督署で対応する方が迅速な解決ができるものもありますので、紛争の内容があっせんに適するかどうかは、相談の際に助言します。
労働委員会では、原則として、公労使の三者構成のあっせん員が、中立・公正な立場であっせんを行い、紛争の解決を援助します。
また、申請から2か月程度での解決を目指し、迅速に対応します。あっせん手続は無料で、非公開です。
なお、あっせんを申請できるのは、県内に所在する事業所の労働者及び使用者です。
あっせん申請書に次の事項を記載し、労働委員会に提出してください。労働委員会では、申請者から詳しく事情をお聞きしますので、できるだけあっせん申請書は直接持参してください(事前の相談段階で、労働委員会に詳しい事情等を説明しているときは、郵送やオンライン申請も可能です(やまなしくらしネット))。記載方法に不明な点があれば、その点についても助言します。
個別的労使紛争のあっせん手続は、労働争議のあっせん手続とほぼ同じです。
なお、あっせんが労働委員会に係属(取り扱い中であること。)していても、自主的に交渉を行い、紛争を解決することは何ら差し支えありません。
あっせん申請書が提出されると、事務局職員による事前調査を行います。申請者の事前調査は、通常、申請書の提出時に併せて行います。相手方当事者に対する事前調査は、事務局職員が被申請者に赴いて実施しています。
事前調査では、申請内容に基づき、紛争の経過、労使の主張の要点、考え方等について、それぞれの事情を聞き取ります。通常は当事者の一方からのあっせんの申請ですので、あっせん申請書の写しを相手方当事者に渡すとともに、あっせんの応諾意思の確認も行います。場合によっては、相手方当事者に対して、制度の趣旨説明を行うこともあります。また、あっせん期日についての希望等も確認します。
事前調査の結果を受けて、山梨県労働委員会の会長が、あっせんの必要性を判断します。会長があっせんを行うことを適当と認めたときは、会長はあっせん員候補者の中からあっせん員を指名します。
あっせん員候補者は、労働関係調整法第10条により労働委員会が予め委嘱した者としています。山梨県労働委員会では、公労使の委員のほか、事務局職員を委嘱していますが、あっせんは原則として公労使の委員各1名の3名で行っています。
なお、あっせんの必要がない、または、紛争の実情があっせんに適さないと判断される場合には、あっせんを開始しません。この場合には、理由を付してその旨を申請者に通知します。
あっせん員が指名されると、あっせんの期日を決め、あっせん員、期日、場所を記載したあっせん開始通知書を当事者双方に送付します。
あっせんの場所は、原則として山梨県労働委員会委員室(山梨県庁北別館3階)で行います。あっせんは非公開で、概ね次のように進められます。
個別的労使紛争は、様々な性質の紛争があり、たとえ似たような事案であっても当事者がどのようなかたちでの紛争解決を望むかは、千差万別です。このため、複数の機関がそれぞれの機関の性格にあった機能を持つとともに、いずれの機関を利用するかに当たっては当事者が期待する解決方法に即して選択できるよう、解決を図る制度が複線的に存在しています。
それぞれの制度にはそれぞれの特徴がありますので、山梨県労働委員会では、どの制度を活用して紛争の解決を図るべきかという点も含めて助言しています。なお、中小企業労働相談所(県民生活センター)や都道府県労働局(総合労働相談コーナー)においても、相談に応じています。
例えば、個別的労使紛争では解雇の有効無効など労使の権利義務に係るものも多く、裁判を通じて解決することも可能です。しかし、裁判には費用と時間がかかること、継続的な労使関係を前提とする事案等には判定的な処理がなじまない場合があること、当事者主義により事実の立証に係る負担が大きいこと等のデメリットがあります。
このため、簡易・迅速・安価に、個別的労使紛争の解決を図る制度が必要とされています。こうした制度として、労働委員会のあっせん制度のほか、都道府県労働局が行っているあっせん制度があります。また、裁判所の労働審判制度を活用することもできます。(もっとも、どこかで当事者が折り合わなければ、最終的には裁判で決着することとなります。)