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ページID:3719更新日:2019年4月5日
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現在、常設展示室にて展示中です。
ダイズ土器に新たに別の種子が見つかる!!(県立博物館発表)
当館に常設展示中の北杜市酒呑場遺跡出土の「縄文ダイズ圧痕(あっこん)を持つ蛇体把手付土器(じゃたいとってつきどき)」の把手部分を、山梨県立博物館がX線分析をしたところ、別の種子の存在が確認されました。さらに九州国立博物館にてCTスキャン分析を依頼した結果、大きさや形状から前回発見されたダイズ同様のマメであることがほぼ判明し、狩猟・採集・漁労を中心とした縄文時代に、複数の植物栽培が存在し利用された可能性がさらに高まりました。
またこのほか、県立博物館および同館の中山学芸課長を中心とする研究チームにより、酒呑場遺跡や女夫石(めおといし)遺跡(韮崎市)から出土した別の土器にもダイズやアズキ類の種子が発見されました。
新たに種子が発見された把手部分 |
縄文人は何を食べていたのか?これは簡単なようで、考古学にとってはなかなか解けない長年の課題でした。
食べ物そのものが残ることは、まずあり得ません。焼け焦げたクッキー(お焼き)が発見されたことはありますが、ほんのわずかな例であり、さらに言えば、粉にしたものを練って作っているため、何を材料としているかはよくわからないというのが実情です。これに対して、炭化したクルミなどが(竪穴)住居内の炉付近から出土した例があります。炉やその周辺は、現代で言う台所や食卓であり、調理や食事の時に炉の中に落としたものが炭化したものでした。
縄文人は自然の恵み、本県で言えば森の恵みを主食としていたのは確かですが、縄文人は食べ物を栽培していたという説(注1)もありました。
今回のいわゆるダイズ土器は、縄文人の食と植物栽培の両方に答える発見と言えます。
酒呑場遺跡(注2)の蛇体把手付土器(「縄文ダイズ圧痕を持つ蛇体把手付土器(注3)」)、この土器の破断した突起部断面から、丸ごと埋め込まれたダイズの圧痕を発見しました。シリコンゴムで型取りしたレプリカを走査型電子顕微鏡による観察(レプリカ・セム法)などで調査・研究し、縄文ダイズであることを確認しました。
丸くころころしている現代の大豆に対して、このダイズはえだまめのような扁平なものです。長さが1.18cmもあり、大きさから栽培種と判断できます。その後、県立博物館の研究者が、マメのヘソの形などを詳しく検討して、栽培種とする研究を発表しました。
さて、このダイズは、偶然土器に紛れ込んだのではなく、土器に埋め込んだものです。ダイズを土器に埋め込むと、ダイズは粘土の水分を吸って膨らみ、今回発見されたような装飾突起の細い部分では、焼成前にヒビが入って折れてしまいます。それにもかかわらず、製作者は乾燥するまでの間執念深く修復しながら、土器を焼き上げたのです。
なぜでしょうか…?
縄文ダイズをこの部分に埋め込むことが重要であった。
そう考えることができます。そうなると、単に食べ物と言うだけでなく、この縄文ダイズに一種の霊力のようなものを見ていた…、その可能性も考えられるようになります。
縄文ダイズの研究は、今スタートラインに着いたばかりです。
来館された小学生たちも「縄文ダイズ土器」に興味津々です。
【写真】見学風景(2008年6月6日)