ページID:3250更新日:2017年10月12日
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大腸菌は健康な家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうちいくつかのものは、人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌の中には、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。
腸管出血性大腸菌は菌の成分によりさらにいくつかに分類されています。代表的なものは「腸管出血性大腸菌O157」です。家畜では症状を出さないことが多く、外から見ただけでは、菌を保有する家畜かどうかの判別は困難です。
人が感染した場合、腸管出血性大腸菌は毒力の強いベロ毒素を出し、特に高齢者や幼児の場合では溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こし、全身性の重篤な症状が出ることがあります。
多くの場合は3~8日の潜伏期をおいて頻回の水様便で発病します。さらに発熱や激しい腹痛を伴い、まもなく著しい血便となることがありますが、多くは一過性です。
これら症状がある人の6~7%が下痢などの初発症状を呈した数日後から2週間以内(多くは5~7日後)に溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重症合併症を発症するといわれています。激しい腹痛と血便がある場合には特に注意が必要です。
腸管出血性大腸菌は下痢を起こす原因のごく一部にすぎません。下痢の原因が腸管出血性大腸菌であるかどうかを確認するために必ず医師の診察を受けましょう。おう吐や下痢は病原物質を排出するための必要な反応です。自分の判断で吐き気止めや下痢止めなどの薬を服用せずに医師の診察を受けるようにしましょう。
最近の腸管出血性大腸菌による食中毒の主な発生状況を見ると、加熱不十分な焼肉、サイコロステーキやユッケをはじめ、冷凍メンチカツ、惣菜、白菜漬け、冷やしキュウリ、キュウリの和え物など様々な食材が原因となっています。また調理器具等を介した二次汚染による発生事例も報告されているので注意が必要です。
腸管出血性大腸菌は75℃1分以上の加熱で死滅しますので、肉は中心部まで十分に加熱することが重要です。
また、加熱できない野菜や果物等には、食品添加物として使用が認められている次亜塩素酸ナトリウムが有効です。効果や使用方法は濃度、つけおき時間、食品の種類によって異なりますので、各製品の使用説明書をよく読んで使ってください。
この他、野菜の腸管出血性大腸菌を除菌するには湯がき(100℃の湯で5秒間程度)が有効であるとされています。野菜が原因とされる腸管出血性大腸菌の感染例も報告されていますので、野菜の衛生管理にも十分な注意が必要です。
次亜塩素酸ナトリウム(食品添加物)を用いた場合では、濃度200ppm(0.02%)の消毒液に5分間浸漬後、
流水で十分すすぎ洗う
ブロッコリーやカリフラワーなどの形が複雑なものは熱湯で湯がく
葉菜類は一枚ずつはがして流水で十分に洗う
きゅうりやトマト、りんごなどよく洗い、皮をむいて食べる
なお、家庭での腸管出血性大腸菌による食中毒を予防するためには「家庭でできるHACCP~食中毒予防の6つのポイント」をご参照ください。