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大腸菌は動物やヒトの腸の中など、世の中に広く存在している細菌です。
ほとんどの大腸菌は病気を引き起こしませんが、一部の大腸菌は下痢や腹痛などのおなかの病気を引き起こすことが知られています。
病気を引き起こす性質を持った大腸菌を「病原大腸菌」と呼び、その中で、ベロ毒素という毒素を産生して強い腹痛や血便(血液の混じった下痢)を起こすものを特に「腸管出血性大腸菌」と呼びます。腸管出血性大腸菌は、それぞれがもつ成分の違いによって、O(オー)26やO(オー)157などと区別されています。
腸管出血性大腸菌感染症は特に夏に多く報告されていますが、それ以外の季節でも発生しています。
腸管出血性大腸菌は、菌が口から体の中に入ることによって感染します。肉、野菜、果物など、さまざまな食べ物からの感染のほかに、ジュースや井戸水といった飲み物からの感染も報告されています。家庭では食べものや飲みものの調理方法や保存方法に気を付けましょう。基本的に加熱などにより殺菌できますが、それだけでなく、普段から菌をつけない、増やさない工夫も必要です。家庭での具体的な対策は厚生労働省のHPをご覧ください。
また、感染した人の便に含まれる腸管出血性大腸菌が口から体内に入っても感染します。トイレのあとや、下痢をしている人のおむつを替えたあとなどでは、きちんと手を洗いましょう。なお、咳やくしゃみでうつることはありません。
原因となる菌が体の中に入ってから3日ほどすると、微熱や腹痛、嘔吐、下痢などの症状が出ます。その後さらに数日してから、下痢に血液が混じるようになりますが、1週間程度で症状が治まります。症状は軽症から重症までさまざまで、感染しても症状が出ない人(無症候性病原体保有者)もいます。症状が出た人のなかで、発症から1週間ほどで溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome, HUS)という病気が起きることがあります。HUSの症状は、腎機能障害(腎臓の働きが低下すること)により全身に浮腫(むくみ)が出る、尿の量が減る、意識障害(ボーっとしたり、変なことを言ったりする)が出る、痙攣(ひきつけ)を起こす、などです。特に高齢者やこどもでは健康な大人と比べてHUSが起きやすいため、そのような症状に注意が必要です。
一般的な下痢症と同じように、治療の基本は安静と水分補給です。下痢のときには、水分といっしょにナトリウムやカリウムなどの体に必要な成分も失われます。これらの成分もいっしょに補給できる経口補水液などを飲むようにしてください。下痢や腹痛の症状が強く、水分摂取が難しいときには医療機関を受診しましょう。
なお、腸管出血性大腸菌感染症のときに下痢止めや抗菌薬を使うと、下痢が長引いてしまったり、合併症(HUS)を起こす可能性が高くなったりすることがあります。これらの薬を使うかどうかは、医師の指示に従うようにしてください。
感染症法では3類感染症に指定されています。飲食物をあつかう職業の方が感染すると、状況に応じて就業制限の対象となることがあります。
飲食店などで提供された飲食物が腸管出血性大腸菌感染症の原因となった場合は、食品衛生法に基づいて営業停止などの措置がとられます。
学校保健安全法では第三種の感染症に指定されているため、児童や生徒などが感染すると出席停止になることがあります。
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