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腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフスA菌によって起きる感染症です。細かく分類すると別の菌のため、腸チフスとパラチフスという別の名前がついていますが、感染したときに起きる症状や対策はほぼ同じです。そのため、腸チフスとパラチフスはひとまとめにして扱われることが多いです。
腸チフス・パラチフスの菌は感染した人の便の中にいます。衛生環境が整っていない発展途上国では食べ物や飲み水が菌に汚染されることがあり、そのような食べ物や飲み水を介して、菌が別の人の体の中に入ることで感染します。
世界では、特に南アジア(インド、バングラデシュ、ネパールなど)や、中南米、アフリカなどの国々で多くの患者が発生しています。2019年まで、日本では腸チフスとパラチフスを合わせて年間50-60例程度の症例が報告されています。そのほとんどは海外で感染し、日本に戻ってきてから発症したものですが、国内での感染例も報告されています。
菌が体内に入って7-14日ほど経過してから、39-40℃近い高熱や、頭痛、だるさ、食欲低下、などの症状を起こします。下痢は必ずしも起きるわけではありません。流行地域に滞在していた方に、39-40℃近い高熱が1週間程度続いたことをきっかけに診断がつくことが多いです。医療機関では便検査だけでなく、菌を検出するための血液検査(血液培養)をすることがあります。
抗菌薬による治療が行われます。ただし、世界的に抗菌薬の効きづらいチフス菌やパラチフス菌が増えてきています。
腸チフスに対するワクチンはありますが、日本国内では認可されていないため、輸入ワクチンを取り扱う医療機関でしか対応できません。また、パラチフスに対するワクチンはありません。腸チフスやパラチフスを予防するためには、菌に汚染された食べ物や飲み水を摂取しないようにする必要があります。海外に行くときには滞在先の衛生環境などを確認しましょう。滞在先ごとの具体的な対策は、下記のHPなどをご覧ください。
感染症法では3類感染症に指定されています。飲食物をあつかう職業の方が感染すると、状況に応じて就業制限の対象となることがあります。
飲食店などで提供された飲食物が腸チフス・パラチフスの原因となった場合は、食品衛生法に基づいて営業停止などの措置がとられます。
学校保健安全法では第三種の感染症に指定されているため、児童や生徒などが感染すると出席停止になることがあります。
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