知事記者会見(令和7年1月6日月曜日)
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防災新館401,402会議室 15時00分から 発表事項 |
知事
改めまして、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年は、多くの皆様のお力添えをいただきまして、おかげさまで、数々のプロジェクト、あるいは課題の解決に向けまして、大きな成果が挙げられたのではないかと思っております。
昨年も少しお話をしましたが、長年の課題でありました富士山の登山規制の問題ですとか、あるいは富士トラム構想の提案、さらには25人学級による少人数教育の拡大、デザインセンターの開設、或いはP2Gシステムの製造プラント工場の都留市への誘致を始めとした水素関連の様々な諸事業など、これらいずれも山梨の明るい未来を県民の皆様に想像していただく切っ掛けになったのではないかなと思っています。
今年はご案内のとおり、私が申し上げるまでもありませんが、山梨県を取り巻く状況というものは決して予断を許さないものでありますので、気を引き締めて、ことに臨んで参りたいと思います。
世界を見ますと、世界的な異常気象、あるいは出口の見えない紛争、さらには、日本が親しくしている国におきましても、政情が流動化していたり、あるいは、関税の問題が取り沙汰されていたりしますが、これが切っ掛けで貿易戦争にならなければ良いなと、あるいは貿易戦争の結果、さらに景気の低迷にならなければ良いなと、このようなリスクがあると思っています。
国内におきましても、これは構造的な問題で、色々なところがもう取り組みを始めていますが、引き続き、人口減少の問題が深刻にのしかかっています。
さらには自然災害も、昨年は北陸地方が本当に大変な状況に見舞われた訳であります。
また、つい先程も北朝鮮からミサイルが発射されまして、そういう意味で安全保障環境も大変心配するところでありますし、また、国内の政治情勢も、総理は頑張っておられますけれども、やはり、少数与党という状況もあります。
さらに、そういうことよりも大きい課題として、2025年問題。
いわゆる団塊の世代の皆さんすべてが後期高齢者となる。
こういう中で、多くの県民の皆さんが、言葉には出されていないかもしれないけれども、現実に厳しい状況に直面していらっしゃる方もいるでしょうし、また、そういう不安を抱えていらっしゃる方もいるだろうと、こういう問題に直面しているということであります。
こうした状況にありまして、私共のミッション・使命は、少なくともここ山梨県におきましては、生活する皆さんが豊かさの実感を得ていただけることを目標として、県が先頭に立って、あらゆるチャレンジをしていかなくてはならないことだと思っております。
本年における施策の推進に当たりましては、引き続き、人々が安心して高水準の豊かさ・幸せを追求できる社会へと進化させていく「ふるさと強靱化」を土台といたしまして、あらゆる可能性を取り込み、新たな価値が創出される、すべての人に対して開かれた「開の国」を目指していくということであります。
そして、施策の推進力として、あらゆる局面において「集合知」を活用していく、これを基本に据えて参りたいと考えております。
特に、令和7年からは、各分野の取り組みにおいて、目線を世界基準に上げることを強く意識して参りたいと思います。
ご案内のとおり本県には、少人数教育、或いは人口減少危機対策、水素をはじめとする最先端技術、スリーアップといった全国初、或いは全国に誇るべき取り組みが数多くあり、現在進行形で進めているわけですが、しかしながら、全国初で満足するという段階は、もう既に終わったと思っています。
先ほど申し上げました、激変する国内外の様々な状況ですとか、或いは国内市場の規模も急速に縮小しているということですので、国内だけを見ていては、山梨の子どもたちに、持続可能な将来というものをもたらすことはできないだろう、こう考えるべきではないかと思っています。
したがいまして、これからは世界を意識しながら取り組みを進めていく必要がありますし、我が山梨県は、それを実行できる十分な能力を持っていると、私は自信を持っております。
ご案内のとおり富士山は、既に世界ブランドでもありますし、その行く末を左右する「富士トラム」につきましても、まさに、グローバルに注目されていると言っても過言ではなかろうと思います。
特に、水素の分野におきましては、昨年、米国のカリフォルニア州と、そして、年末にインドを訪問いたしましたが、いずれの地域におきましても、山梨県が有しますこのP2Gシステム、それに基づくグリーン水素に大変高い関心を示されました。
かつ、関心を示すだけではなくて、極めて強いご期待もいただいていると、こういう実感を得たところであります。
山梨県は、もう日本のトップランナーであることは言うに及ばずですが、世界的にも、本県がこの分野において、しっかりとリーダーシップをとっていくことが求められていると言っても過言ではなかろうと思います。
したがいまして、私どもにとりましては、競い合う競争相手も、協力する共創相手も、相手はもう世界も含めたグローバルだと、こう認識すべきではないかと思っています。
ただ、当然のことながら足元の県民生活の現実の直視、これは大前提中の大前提であります。
先ほども、ふるさと強靱化というものは施策の土台であると、この旨を申し上げましたが、まさに豊かさの実感は、今の生活の厳しさの超克があってこそのものだと、このように位置付けています。
長引く物価の高騰、人口減少、先ほど申し上げた2025年問題など、多くの県民の皆様が直面する課題につきまして、現状をしっかりと把握した上で、県民生活に寄り添っていく姿勢を徹底していきたいと思います。
その上で、できる限りの対策を講じていきたいと思います。
また、一方で、こういう現実というものは時々刻々と変化するものでありますので、行政だけで常に最適解にたどり着くことができるかといえば、そうではないことはもう明らかであろうかと思います。
この最適解を導き出すプロセスにおきましては、山梨のすべての可能性を活かし、そして、社会を構成するすべての皆さんの当事者意識のもとで、様々な意見をぶつけ合い、まさに集合知を形成していくことが不可欠であります。
私たちは、その一つの好事例というものをもう既に体験しているところであります。
富士トラム構想でまさにそれであると申し上げたいと思います。
ご案内のとおり、富士山登山鉄道構想をめぐりまして、昨年来、様々な議論を大変熱心にぶつけ合う中で、その中から紡ぎ出されました、富士トラム構想というものは、リニア中央新幹線との関わりにおきまして、本県の将来を切り開く大いなる可能性を生み出すものだと、私はそのように考えておりますが、これこそまさに、この集合知の大きな成果ともいえるのではないか、こう考える次第であります。
今年の干支は、乙巳であって、この乙巳というのは、蛇の脱皮と、草木の成長になぞらえて、進化と変革、挑戦の意味があるとされています。
私、浅学であれですけれども、学のある方に聞きますと、哲学者ニーチェは、「脱皮できない蛇は滅びる」と述べているということであります。
まさに、成功体験に縛られて、これまでの殻に閉じこもってはいけないということが、このニーチェの言葉にもありますし、それこそまさに本年のこの乙巳の干支が示す方向性ではないかなと考えています。
今年は2期目の任期の折り返しの年となりますが、これまでの慣習やしがらみはもとより、さらには、我々自身の成功体験にもとらわれることなく、時代状況に虚心坦懐に向き合って、山梨県のさらなる進化、飛躍を目指し、貪欲に具体的な成果を求めて、施策を推進していきたいと思います。
以上、本年の始まりにあたりまして、抱負を述べさせていただきました。
今年も、どうぞよろしくお願いいたします。
記者
2期目の折り返しの年になるということで、1ヶ月後には定例会の招集告示が控えているというような状況です。
令和7年度の当初予算にあたって、現時点でどのような方針で、どのような内容、どの分野に力を入れていくというようなことに関して、お考えがあればお伺いさせていただきたいと思います。
知事
まずは、25人学級というものは着実に進めていくべく、この予算確保はしっかり行っていきたいと思います。
人口減少に関する問題は、引き続き、重要事項ですので、当然、進めていきます。
さらに先ほど申し上げました2025年問題、いわゆるケアラー支援をいかにすべきか、これは色々な文脈で、今、様々なご家族、お年寄りだけではなくて、例えば、不登校になったお子さんですとか、様々なご家族に対して心配をして、ケアされている方をいかに支援していくか、ここをしっかり議会とも議論しながら、煮詰めていきたいと思っています。
併せまして、県政課題は多岐に渡っていますので、これから整理して、県民の皆様にも示した上で、議会で議論していきたいとは思っておりますが、産業面、メディカル・デバイス・コリドー構想では、支援企業の生産額の伸びは300億円超を実現しましたが、一つ桁を上げることを目指して取り組みを進めていきたいと思っています。
ここで満足するわけには全然いかない水準だと思いますし、これからの前提として、日本全体を取り巻く製造業の環境というのは、輸出も含めてかなり厳しくなりうると思っています。
ひょっとしたら、我が国からの対米輸出についても、大きな関税が課せられる、そういう危険性もあるわけですので、できる限り付加価値の高いビジネスへのシフト、先ほど申し上げました医療ですとか、水素、或いは航空宇宙産業にも、本県の主力産業は機械電子工業ですので、さらにその安定性を図るという意味と合わせて、付加価値の高い産業構造への転換を急いでいくべきだろうと考えています。
他方で、観光は、むしろ逆に大いに人に来ていただきたいわけですが、それが地域経済の収益にしっかりと繋がっていくように、或いはそこで働かれる皆さんの所得に繋がっていくように、ここはしっかりと拘って、それに必要な対策というものを講じていくことが重要なのだろうと思っています。
農業に関しましても、おかげさまで果樹を中心に好調が続いておりますが、これがいつまで続くかわからないと、そういう危機感を持ちながら向き合っていきたいと思います。
これも国内市場は縮小傾向がずっと続いていますが、であるがゆえに、早い段階で海外への輸出の販路を開きたいと、そうするべく差別化を図るための品質保持のための仕掛け、それはAI選果機などもそうですけども、そういうものもやりながら、ブランドの確立もしながら取り組みを進めることが必要であろうと思っています。
あとは、冒頭で申し上げましたが、本県の水素に関連する事業について、海外の行く先々で、本当に強い関心が示されています。
インド出張のご報告は別途いたしたいと思いますが、アメリカ・カリフォルニア州でも大変強い関心を示され、ちょっと驚いたところですが、インドはそれ以上でした。
本当に強い関心を山梨県の水素プロジェクトに示されますし、一緒に作ってきましょうという話もしだしている状況ですので、こういうものにしっかりと応えて、将来に渡る山梨県の産業の一つの柱を作っていきたいと思っています。
富士トラム構想は、引き続き、県民の皆さんと対話を交わしながら、実現に向けたフェーズに一歩話を進めていきたいと思う次第です。
県土の強靱化は、去年どうだった、今年、来年というレベルではなく、継続して取り組むべき話であります。
防災関係は、実は、年初来、各県の知事の皆さんとメールなどでやりとりをしていますけれど、実践的な広域連携のあり方を考えていきたいなと思います。
やるべきことは様々あって、当初予算で何をどこまでできるかは、今、一生懸命、担当の中で議論をしていますので、もう少しお時間をいただいて整理した上でお話をさせていただければと思います。
記者
昨年末に県の人口が79万人を割ったということで、知事が以前もおっしゃっていたように、人口減少が牙を向くという時代がいよいよそのフェーズに入ったのかと思うのですけども、改めて、人口減少危機突破宣言も出されていますが、人口減少問題に対して今年特にどういうふうに取り組みたいかということを詳しく教えていただければと思います。
知事
この問題の根本は、色々議論の末に大分私も見えてくるところもあったと思っていますけれども、やはり若い世代の人たちの将来に対する期待、或いは確信、これをいかに持っていただけるような社会環境を作るかにかかっているのではないかと思っています。
そういう意味で、要は少なくとも社会全体が先ほど申し上げましたように、不確かさを増している中で、社会全体が伸びていくことができれば本当はいいのですけども、なかなかそれも難しかろうと。
そうであれば、少なくとも個人が頑張れば報われる社会を作っていきましょうということで、今、私達ご案内のとおりスリーアップ運動というものを展開しておりますが、これをさらに現実のものとして、より多くの皆さんに実感をしてもらえるような取り組みを進めていきたいと思っています。
つまり、今これぐらいの所得しかないけれども、頑張れば収入は上がるのだと、子供を持つことに自信が持てる状況になるのだと、今、自分は頑張っているのだから大丈夫だと思っていただけるような、そういう山梨の社会づくりをやっていきたいと思います。
かつて失われた30年では、今が最高、明日はどんどん悪くなる。
こういう状態ではなくて、明日を良くするかどうかは、本当は全体ができればそれが一番良いわけですが、でも少なくとも今、自分は頑張っている、頑張っていれば報われるのだと、そういう確信を持っていただけるような社会を築くことが私はこの人口減少問題の解消の本質中の本質ではないかと思いますので、そういう意味で、今、取り組みをしているスリーアップ運動、さらに、他に色々なお知恵があれば、ぜひ私どもに授けていただき、あらゆることをやっていきたいと思います。