知事臨時記者会見(令和7年4月10日木曜日)
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防災新館401,402会議室 13時30分から 発表事項 |
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知事
この度の米国の関税措置につきまして、県の対応を発表いたします。
本日、「山梨県米国の関税措置に関する総合対策本部」を設置いたしまして、第1回本部会議を開催して参りました。
県内の状況につきましては、企業や団体などに聞き取りを行ったところ、特に自動車部品のメーカーからは、何らかの影響は避けられない、そういう回答がございました。
その他の製造業、あるいは地場産業、農業などにつきましても、米国は主要な輸出先ではないものの今後の景気後退による国内外の需要の落ち込みについては懸念する声があったと、現状、こういう状態であります。
先ほど本部会議でも申し上げましたが、アメリカのトランプ大統領による政策ですが、戦後80年間のまさに基本的な構造を変えるパラダイムシフトだと、このように認識すべきだと思っています。
大変インパクトの大きい出来事であり、そういうものに対しましては従来の延長線上の対応だけでは不十分だろうと考えています。
一方で山梨県民の皆様と山梨県の社会におきましては、かつてコロナ禍においてそうだったように、例え逆風であっても自らの改革に果敢に挑み、そして困難を克服した先に跳躍飛躍を果たしてきた。
そういう経験知がございます。
今般の事態に対しましても、例え、日本全体あるいは世界が動揺したとしても、本県はなお環境変化の先に上昇を目指すスタンスで臨んで参りたいと思います。
すなわち私達は、今般の情勢というものを、むしろ構造的な改革の契機であると捉え、新分野進出などの積極的な経営転換を図る方々を強力に支援し、更なる向上を成し遂げると、このように臨んで参りたいと思います。
したがいまして、県といたしましては、専門家による伴走支援などを行い、新分野への進出や新市場の開拓、さらには新商品開発などを後押しして参ります。
加えまして、今後、市場拡大が期待されます医療機器、水素・燃料電池、航空宇宙防衛産業、これはこれまでも展開を後押ししてきたものですが、そこへの参入をさらに促進して参りたいと思います。
併せまして、増加するインバウンド需要をこれまで以上に地域経済のマーケットとして取り込んでいきたいと思います。
このため、本県ならではの農産物あるいは地場産品などの磨き上げを行い、高付加価値化、魅力度の向上を進めていく他、コンテンツの価値や魅力をインバウンドの皆さんに効果的に伝え、実際に本県に足を運ばせるランドオペレーターの育成確保、こういう周辺の作業にも取り組んでいきたいと思います。
併せまして、今本県では、各国との交流が極めて活発に行われておりますが、特にベトナム、インド、中国などとのビジネス重視の交流を一層図り、産業の国際展開を促進していく他、本県の農産物あるいは地場産品、観光資源、富士トラムなど、県に関するあらゆるリソース、あるいは機会、チャンスというものを最大限活用して参りたいと思います。
なお、当面の企業への支援策といたしましては、産業政策部内に相談窓口を開設した他、事業者の一時的な資金繰りにつきましては県制度融資で対応して参ります。
さらに、情報共有あるいは新たな支援策の協議などを行うため県経済団体、そして金融機関とで構成する協議会を設置することといたします。
今後、影響は中長期に及ぶことも想定されますので、県内企業における賃上げ意欲の減衰ですとか、あるいはさらに先鋭化をしております中国の対応についても影響不可避だと思いますので、タイムリーに対応しておりたいと思います。
加えて、政府の対米交渉の結果次第では、今予期しない方向からの影響もありうるため、アンテナを高く情報収集を続けて参りたいと思います。
繰り返しになりますが、米国のトランプ大統領による関税措置をはじめとする対外的な政策を受けまして、我が国は、国全体として状況変化に対応していく必要が生じているのではないかと、このように認識をしております。
ただ、歴史的には、アメリカの内政状況に応じて日本の社会構造が多大な調整圧力を受けざるを得ないということは、決して今回が初めてではないわけです。
戦後という時間だけをとりましても、日本社会は常にアメリカの内政と対外姿勢の波を被り続けた上での現在であるとも言えると思います。
そしてその都度都度、私達のこの日本社会は、生活から産業まであらゆる局面において構造強化を遂げ、更なる飛躍の活路を見出してきた。
これが私達日本全体の歩んできた歴史じゃないかなと思います。
そして、ここ山梨におきましては、さらに繰り返しとなりますが、他のどの地域にも増しまして、困難を克服し、更なる高みへの跳躍を果たしてきたと、こういう実績と経験があります。
まさに100年に一度とも言われるコロナ禍は、もうだいぶ記憶も薄れつつあるかもしれませんが、ただこのコロナ禍にありまして、山梨県民の皆様と山梨県の社会は、未曾有の逆風のさなかにあっても、超感染症社会の進化をどこよりも早く成し遂げたとこういう経験と実績がございます。
したがいまして、例え、トランプ関税が、かつて戦後世界が経験したことのないような未曾有の衝撃となり得たとしても、そしてそれに対して日本全体一様に動揺を示したとしても、山梨県はなお、この変革を乗り越え、そしてその先に更なる向上を成し遂げられる。このように確信する次第であります。
その実現に向けて私ども県は先頭に立ってあらゆる政策を躊躇なく講じて参りたいと思います。
是非、県民の皆様と力を合わせて、この状況を克服し、そして、乗り越えることは必ずできると、私はそのように信じておりますし、県民の皆様のご協力を改めてお願いを申し上げます。
私からは以上です。
記者
今回の総合対策本部の設置はかなり早い、スピーディーな対応かと思います。
そのあたりの知事の狙いを一つ伺いたいのと、あとは県内企業に対して何かメッセージがありましたら教えていただけますか。
知事
今日のこの事態というのは、ある意味トランプ大統領が政権に就かれてから、決して予想されない話ではなかったと思います。
いよいよそういうタイミングがきたのかなと思いますが、先ほど申し上げましたように、これまでも多かれ少なかれアメリカからの衝撃というものは日本社会にはあって、それをみんなで必死に乗り越えてきた。
こういうのが日本社会ですし、その中で山梨県は特に上手くやってこられた。ここ近年はですね。
やってこられている実績がありますので、まずは動揺せずに、これからやってくる実際の影響・事態というものを、もうどうせやってくるわけですから、より良い方向にいかに力を転化するか、こういうことについて早いうちから県民あるいは関係者の皆さん、心構えとそれからいろいろな思考実験というか、そういうものをしていきたいということで、もちろん県はその先頭に立ちますが、早い段階で対策本部を作ろうということであります。
そして、これも繰り返しになりますが、多かれ少なかれ、今回の自動車の問題ですとか、あるいはアメリカあるいは中国との関係についても、今回心配していることが顕在化しましたが、これは遅かれ早かれいずれやってくるであろうことだと、こういうふうにむしろもう考えるべきだと思っています。
であれば、その新しい環境変化に対して、是非、それを奇貨として、乗り越えていくと、ここに是非、県民の皆様そして経済界の皆様に意識を集中してやっていくことが結果として一番最も良い結果をもたらすと私は思いますし、おそらく皆様も同意をしていただけると思います。
ですので、是非、力を合わせ、動揺せずに乗り越えていきましょうとそういうふうに皆様にお伝えしたいと思います。
記者
トランプ大統領が90日間、一部相互関税を停止すると発表しました。
知事の率直な受け止めをお願いいたします。
知事
これから様々な交渉事が始まると思いますし、90日間延長したからよかったというわけでも全くならないわけで、元々これまで我々が慣れ親しんだ自由貿易尊重主義的な考え方とは、やはりちょっと異なるお考えのもとに超大国アメリカの運営をされるわけですから、仮に90日間延びたとしても、違う形での何がしかのことはやってくるわけで、それに対して、いかに順応していくか、適応していくか、ということを考える必要性は全く減らないと思います。
むしろこの90日間を有効活用して、できる限り早期の準備というか変革を進めて行くべきだと考えています。
記者
現時点で6月補正予算などによる対応などは考えていらっしゃいますでしょうか。
知事
必要であれば必要な措置を講じるということだと思います。
記者
宮城県の村井知事が、全国知事会の会長として政府に今回の米国による関税に対する政府への要望書を今日提出するとのことでしたが、山梨県の方で何か具体的に政府に要請したいことが現時点でありましたら教えていただきたいと思います。
知事
基本は国際問題ですので、地方自治体にできることは限りがあるわけです。
まず、政府においては、しっかりとアメリカと交渉して欲しい。
そして、できる限り関税に影響がないような成果を持ってきていただきたいと思います。
さらに、先ほど、新分野への進出や販路の拡大といった方向を目指すべきではないかという話をしましたが、そこに対するしっかりとした国が果たすべき役割を是非、果たしていただきたいと思います。
これは全国知事会を通じましても、政府に要望していきたいと思います。
例えば、これから新たなマーケットに出ていくにあたっても、その先のマーケットで今度は関税が高いところがあるわけです。
ここは、是非、関税の引き下げについてもしっかり政府としてはやっていただきたいと思います。
例えば、インド等に関しても対外製品については高率の関税がかかってるやに聞いています。
逆に、日本はアメリカ以外の地域との貿易をしっかりできるように、関税の引き下げ交渉は、是非、やっていただきたいと思います。
また、非関税障壁、これはアメリカに対しても言えますが、本県では額としてはそんな大きくないかもしれませんけれども、例えば、農産物、モモですとかブドウですとかを米国に輸出したいと思っております。
しかし、彼の地の植物検疫という非関税障壁によって輸出がかなっていないわけですから、そういうところは是非、堂々と言って欲しいです。
最近は、米国産のモモ、スモモを輸入するのに、国内市場を開けるのに政府は一生懸命なようですが、全くアメリカに対する輸出への道を開こうとはしていないという情けない状況は、是非、改善していただきたいと思います。
アメリカとの交渉に注力はしていただきつつ、その他の地域との貿易の拡大がスムーズにいくように、しっかりとした対応をこれまで以上にしていただくことを、全国知事会を通じて求めていきたいと思っております。
記者
先ほどのお話の中で、今後、企業の賃上げ意欲の減衰と合わせて、先鋭化する中国への対応というお話がありました。
具体的に知事がどのようなことをイメージされているのか教えてください。
知事
代表的な例として、レアアースの輸出規制を主張していると聞いています。
アメリカとの貿易戦争の余波が生じうるわけですが、それがどの方向から飛んでくるのか分かりませんが、こうしたことに対して十分に警戒をしながら、どのような影響を及ぼすのか、しっかり情報を得て、対応していく必要があると思います。
記者
このトランプ政権の関税措置を構造改革への奇貨と捉えるというような心意気は大変結構なことだとは思うのですが、一方で全く望んでいたわけでもない外圧みたいなものだろうかなと思います。
首相は、「国難」だというような表現もされておりますし、またこの2回の世界大戦を経て、基本的には国際平和のためには、自由貿易体制というのが望ましいものだというのは、基本的な認識として国際社会で共有されてきたものとは思うんですが、それに対して、あまりにも異なるトランプ政権の政策であったり打ち出し方にしても、印象としてはすごく身勝手な、というような友好国の元首に対してあんまり言ってはいけないのかもしれませんが、非常に憤りを感じる人も多いのではないかと思います。
そういう中で、実際に国民が住まっている自治体ですから、政府に対して、トランプ政権について、その個別の条件闘争ということ以外に、何か考え方の根本的なことに対して、何か異を唱えるというようなことを、知事会なりなんなりか、何らかのチャンネルを通じて働きかける方がいいのかなと思うのですが、その辺りいかがでしょうか。
知事
喧嘩は勝てないと意味がないので。色々、我々が例えば石破内閣に物申して憂さを晴らすことで、何がしかを生み出すかというのは大変疑問に思っています。
実際、我が国が、現状において、アメリカに対して何がしかそのカードを切るような、その腹の据わった状況でありうるのかと、それは私がどうこうする立場ではないのですけれども、是非、私としては米国に対して勝てる算段を講じて、物をしっかりと言って欲しいとこういう思いはまた変わりませんが、それが今の国にどこまで期待できるのかは、ちょっと懐疑的であります。
そうした中で我々地方自治体としては、与えられた土俵の中で、いかに県民生活あるいは県経済を守っていくか、あるいは守るだけではなくて、そこからさらに将来展望を描いていくのか、これを考えることに全力を注ぐのが、まず我々に期待される果たすべき役割と、このように心得ておりますので、トランプ大統領に対しても言いたいことは山ほどあるし、アメリカという国に対しても言いたいことは山ほどありますし、中国に対しても同様ですが、ただ我々地方自治体、特に山梨県は決して規模が大きい自治体ではないわけですので、繰り返しになりますが、この中でいかに県民生活、あるいは県経済、県民経済を守るか、私としてはここに全集中をしていきたいと考えております。
記者
これまでの政府の対応で、報道で、経済対策を慌ててやるような話もいろいろ出ていますけれども、知事がおっしゃるようにトランプさんが当選した時点である程度想定されたことだったと思うのですが、そういった中での日本政府の現時点、これまでの内政的な対応をどう評価されるか、ご所見、ご所感をお伺いできればと思います。
知事
これまでも総理が訪米されたり、ご尽力はされてるとは思っています。
思っていますが、それ以上にトランプ政権の対応が、ドラスティックだったということかと思います。ただ、ここで慌てて右往左往するのはよろしくないと思っていて、国会における議論の詳細は、承知はしておりませんが、まずはこういう関税による圧迫があったとしても、圧迫の軽減を図ることはもちろん重要な一丁目一番地ですけども、それがあったとしても、できる限り経済あるいは国民生活に影響しないようにするにはどうするんだというところに、まず議論を集中させていただきたいと思います。
国民1人当たり何万円配るとか、そんな話が出ていますが、もしそういうことがあるんだとすれば、それ自体は否定も肯定もしませんけれども、今リソースを割いて充当すべき対象はそこかというのは、ちょっと私は疑問に思っています。