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ページID:92660更新日:2019年12月13日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
■企業ニーズ対応試作開発事業
センターでは、研究成果を円滑に企業に普及し、実用化へ繋げていくために、企業からの要望に沿って追試験・試作等を行う「企業ニーズ対応試作開発事業」を実施しています。今回、H28~29年度に実施した「高特性溶射技術のインプラント材料への適用に関する研究」の追試験・試作等を行いましたので紹介します。
■インプラント材料の皮膜形成について
インプラントとは人工骨や人工歯根のように体内に埋め込まれる人工器具のことで、その素材にはチタンが広く利用されています。これは、チタンが錆びにくく、生体適合性が優れているためですが、チタンでも少なからず金属アレルギーを引き起こす可能性があります。その対策として、チタンよりも生体適合性の高いセラミックやハイドロキシアパタイト(骨や歯の主要成分)をチタン表面に形成することで、より安全で機能性の高いインプラント材料が提供可能になると考えられます。
■研究終了時の課題
H28~29年度の研究では、高特性溶射装置を用いてチタンへのセラミックおよびハイドロキシアパタイトの皮膜形成を検討しました。溶射とは、加熱した原料粉末を基材に吹き付けて皮膜形成する手法で、高特性溶射装置は原料供給方法の改善により省エネルギーで皮膜形成を可能とした装置です。高特性溶射による皮膜は従来手法による皮膜より平滑で密着性に優れることが明らかになりましたが、高い生体適合性が期待されるハイドロキシアパタイトの皮膜では、表面粗さや厚さが不均一になるという課題がありました。
■実用化に向けた実施内容
実用化には密着性・平滑性に優れた、高品質なハイドロキシアパタイト皮膜が必要となります。これまで、原料の粉末は直径0.1μm以下と非常に細かいものを使用していましたが、造粒という手法により直径20μm程度の粒子とし、これを原料とすることで皮膜の改善を試みました。
■検討結果
造粒粉末を原料として高特性溶射により皮膜を形成し、その皮膜表面を観察しました。その結果、造粒原料を使用した皮膜は従来粉末を用いた皮膜(図1)よりも表面がより平滑になることがわかりました(図2、図3)。
また、造粒原料を使用すると従来原料を使用した場合よりポーラス(空孔)の少ない緻密な皮膜となることが明らかになりました。以上のことから、より安全で品質の高いインプラント材料の提供が可能となりました。現在も高特性溶射装置の実用化に向けて企業への支援を続けています。
(図1)従来粉末 |
(図2)造粒粉末 |
(図3)焼成造粒粉末 |
■担当からひと言
センターでは様々な研究シーズを保有しており、企業ニーズ対応試作開発事業等を利用して実用化に向けた支援が可能です。「センターの研究シーズを利用して、こういうことがやりたい!」という要望がありましたらぜひご相談ください。
工業材料科