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ページID:117564更新日:2024年10月1日

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産業技術センタープロポーザル

【山梨県産業技術センタープロポーザル】

産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などを紹介します。

TOPIC:【研究成果事例紹介】健康志向パンの開発

 

今回のTOPICは、山梨県産小麦「ゆめかおり」の全粒粉やふすまを使用した「健康志向のパン製造技術の開発」をご紹介します。

近年の健康への意識の高まりから、食に対する「健康志向」も高くなっています。なぜ全粒粉やふすまを使ったパンが健康につながるのか?そのあたりの開発秘話を、企画連携推進部のHが、当センター食品酒類・バイオ科の樋口研究員に伺いました。

 

H:健康志向のパン製造技術開発のきっかけをお聞かせください。

 

樋口:本県では、製パン適性が高い小麦品種「ゆめかおり」の収穫量が年々増加傾向にあり、地産地消への関心が高くなっています。また、近年の健康志向の高まりを背景に、全粒粉や小麦製粉時に取り除かれるふすまの健康効果に関心を持つ方が増えており、全粒粉やふすまを使用したウエルネスパン市場へのニーズが高くなっています。そこで、本県の小麦を使用した健康的でおいしいパンの開発を目指すことにしました。

 

H:「全粒粉」?「ふすま」って何ですか?

 

樋口:小麦は次の図のように「外皮」「胚乳」および「胚芽」の3つの部位から構成されています。 

 

   小麦

 

小麦全体を粉にしたものが「全粒粉」、小麦の中の胚乳のみを粉にしたものが「小麦粉」、製粉時に取り除かれたフレーク状の外皮が「ふすま」です。

 

H:全粒粉やふすまはビタミンB群や食物繊維が豊富であると聞きますが、普通の小麦粉とどのくらい違うのですか?

 

樋口:次の表をご覧ください。

~食物繊維総量やビタミンB群等の成分分析~

成分表

H:ふすまは特に食物繊維量(表の緑色枠内参照)の多さが目立ちますね。食物繊維は腸内環境を整えたり、生活習慣病を予防する効果が期待できたりすると言われていますね。そしてビタミンB群(表の赤色枠内参照)も多いのですね。まさに栄養素が豊富で健康志向のパンができそうですね。

 

樋口:そのとおりです。ふすまや全粒粉に含まれるそれらの成分は、普段の食事で不足しがちな栄養素なので、健康志向の方に注目されています。ですが、小麦粉のみで製造した白いパンにはない独特の風味があるので、好みがわかれるパンであることも事実です。

 

H:ふすまや全粒粉を使用したパンが健康に貢献できることがよくわかりました。独特の風味も改善する必要がありそうですね。では、そのパンはどのように作るのでしょうか。

 

樋口:まず、全粒粉を使用した食パンの場合ですが、小麦粉のみを使用したパン作りと比較して、ふくらみが悪くなるため、加水量や捏ね時間等を工夫して試作しています。

そして、現在は、ふすまを小麦粉に添加することで、より栄養価の高いパンの製造試験に取り組んでいます。

 

<健康志向のパン製作工程(ふすま入り食パン)>

材料:県産小麦粉、製粉時に得られたふすま、砂糖、食塩、脱脂粉乳、油脂、生イースト、水など・・・

 

       材料             ↓これがふすま    ①材料をミキサーでこねる  

材料   ふすま   こねる

 

 ②ばんじゅう※に生地を移す       ③一次発酵        ④分割&計量&まるめ

ばんじゅう 一次発酵 まるめ

 ※:薄型コンテナ

 ⑤生地を休ませる        ⑥成形&二次発酵          ⑦オーブンで焼成

ベンチタイム 成形 できあがり

 

 

H:おいそうなパンが焼き上がりましたね。見た目はふすまが粒々してみえますね・・!

では一口・・・。小麦の香ばしい香りがあり、食感も少し粒感がありますね。好みはあると思いますが、個人的にはおいしいと思いました。

これらのパンの試作過程で、苦労したことはありますか?

 

樋口:ふすまを使用すると、全粒粉の場合と比べてもさらにふくらみが悪くなることがわかりました。使用する水の量、温度、ふすま量などの配合と生地をこねる際の最適条件を見つけるために、何度も試行錯誤を繰り返し行わなければなりませんでした。

また、健康志向のパンの課題である、ふすま独特の風味(ふすま臭)にも悩まされました。

 

H:ふくらみについては最適条件を見つけるために何度も配分や条件を変えながら試験をするのは大変でしたね。ふすま独特の風味(ふすま臭)の改善については、何か成果が得られましたか?

 

樋口:当センターで以前から研究されている「セルロースナノファイバー(CNF)※」に注目しました。CNFは食品類だけではなく、様々な製品で消臭機能が認められていたからです。

 

H:CNFを使うとふすま臭を低減することができるのですか?

 

樋口: 私たちは、CNFの繊維の細かさと表面積の大きさに注目し、不快なにおいを吸着する効果があるのではないかと考え、ふすまパンにCNFを添加した製パン試験に取り組みました。

検討の結果、ふすまとCNFの濃度によっては、においを低減できることがわかりました。

においを分析する装置で「ふすまパン」と「CNF添加ふすまパン」の測定を行った結果、CNFを添加したパンでは、ふすま臭が低減されていることがわかりました。この成果の一部については、現在特許出願中です。

また、CNFの使用は生地の粘度を変化させるので、ふくらみの改善効果についても検証しました。その結果、CNFを使用することで、ふすま入りパンの風味向上だけでなく、ふくらみを改善できることがわかりました。

 

H:様々なご苦労を乗り越えてふすまや全粒粉を使用した「健康志向のパン」の研究をされてきたのですね。今後の目標をお聞かせください。

 

樋口:よりおいしいふすまパンの新たな製造方法を見つけるため、研究に取り組んでいます。私たちの研究成果が県内のパン製造業者様の製品開発の一助となりますよう、これからも研究を続けてまいります。

 

H:今後の研究に期待しています。今日はありがとうございました。

 

※セルロースナノファイバー(CNF)の説明については、過去のプロポーザルTOPIC:R6.03-3【研究成果事例紹介】洗える和紙ができるまでをご参照ください。

 

このページに関するお問い合わせ先

山梨県産業政策部産業技術センター 
住所:〒400-0055 甲府市大津町2094
電話番号:055(243)6111   ファクス番号:055(243)6110

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