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ページID:97709更新日:2020年12月18日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
■はじめに 産業技術センターでは様々な3Dスキャナを整備しており、デジタルものづくりの進展に伴って利用件数が増えています。今回は、非接触式の3Dスキャナについて、センターにどんな設備があるのか、どういった使い方ができるのか紹介します。
■3Dスキャナとはみなさんはスキャナをご存知ですか。スキャナと言うと、ご家庭やコンビニのコピー機をイメージされる方も多いと思います。これは、紙文書など二次元のものを画像データとして読み取るものです。では、3Dスキャナとは何でしょうか?その名のとおり、フィギュアなどの三次元の物体を三次元の(点群)データとして読み取るものです。 実は3Dスキャナには読み取り方式に様々なものがあり、接触式と非接触式に大きく分けられ、近年では特殊な手法としてX線CTも活用されています。非接触式はラインレーザ方式(レーザ切断方式)、パターン投影方式(光投影法)などに分けられます。それぞれ得意とするものが異なっており、接触式は非常に精度良くスキャンできますが、スキャン時間が長く、複雑形状の測定には向きません。一方で、非接触式のパターン投影方式は、スキャン時間は短いですが、接触式ほどの精度を得ることは困難です。
図一般的なスキャナと3Dスキャナの比較
図各方式の大まかな立ち位置(測定対象によっても変わります)
■産業技術センターの保有設備それでは、産業技術センターが保有する3Dスキャナ(非接触式)をご紹介します。センターには計3台の非接触式3Dスキャナがあり、2つの方式で非接触スキャンができます。 (各機器名をクリックすると、機器の詳細ページへ移動できます。)
甲府技術支援センター
富士技術支援センター
■3Dスキャナの活用方法センターでは様々な内容で3Dスキャナをご利用いただいておりますが、主な目的は設計値照合、リバースエンジニアリング、設計準備、サンプル製作・複製の4つです。それぞれどのような内容か簡単に説明します。
1.設計値照合 これは簡単に言うと設計図どおりに作れたかチェックすることです。近年では、CAD(コンピュータで製作した電子的な設計図)による製品開発が増えています。実際に製造した製品を3Dスキャナでスキャンし、得られた画像データをCADデータと重ね合わせることで、設計図とのズレを確認できます。ズレの有無や位置を確認することができれば、製造方法等の改善を効率よく行え、製品の高品質化を図ることができます。 センターでは宝飾関係などデザイン性の高い地場産業製品をパターン投影方式で、金型や機構部品など高い精度を必要とする基盤産業製品をラインレーザ方式で対応することが多いです。 図設計値照合の様子。左上からCADデータ、製造品、スキャンデータ、照合画面。照合画面ではCADデータと製造品とのズレ(凹凸)を色で確認できます。
2.リバースエンジニアリング 3Dスキャナをインターネット検索すると、この事例紹介が多く見られます。リバースエンジニアリングとは、狭義ではすでにある製品から設計図を起こすことを言います。例えば、自社製品や製造金型が古く、設計図がない場合に、製品や金型から得られた実測値データから設計図を作り直すといったことが挙げられます。しかし、3Dスキャナで得られるのは、X、Y、Zの座標値を持った点群データであり、平面や円などの幾何形状から成るCADデータではありません。そのため、設計変更等を行えるCADデータを得るためには変換作業が必要であり、製品形状にもよりますがそれなりに時間と労力が必要です。 図リバースエンジニアリングの工程。製品をスキャンし、スキャンデータからCADデータを作成します。
3.設計準備 装身具やインテリア製品などに多い内容です。製品の試作段階では手作業で作成し、ある程度デザインが固まったところでスキャンします。得られたデータの製品曲面をなめらかにするなど、量産化へ向けた調整を行います。スキャン・修正を複数回実施することもあり、センターでは測定速度の速いパターン投影方式での対応が多いです。 図うさぎの置物のスキャンデータからピッタリな緩衝材を設計する様子。左上から順に、現物、スキャンデータ、補正したスキャンデータ、設計の様子。
4.サンプル製作・複製 リバースエンジニアリングと異なり、CADデータへの変換を行わずに全く同じものを複製するといった内容です。3Dプリンタと併用されることが多い案件で、過去には文化財の複製に利用されたこともあります。 図文化財の現物(左)と3Dプリンターによる複製品(右) ■センターの研究紹介これまでに、センターでは企業の皆様からの相談内容に広く対応できるよう、3Dスキャナに関する研究を実施してきました。例えば、センターで所有する非接触3Dスキャナの測定誤差を比較し、精度良く測定するための対策を検討したり、3Dスキャナで県内の文化財等をスキャンし、そのデータをデザインソースとして利用できるようインターネット上で公開したりしています。 3Dスキャナで、すべての形状の三次元データが取得できるとは限りませんが、取得したデータをCADソフトや解析ソフトと組み合わせて活用していくことで、商品開発や生産管理上で、できることが広がります。近年では、スマートフォンでも三次元のデータ取得ができるようになっており、今後も発展していく分野と思われます。 デザイン技術部
3Dスキャナができることは幅広く、有効活用すれば製品開発や品質保証を効率よく進めることができます。一方で、適切な測定方法・測定機器を選択しなければ、有益な結果を得ることはできません。3Dスキャナでこんなことをしてみたい、こんなことができるのではないか、など何か悩み事がありましたら、一度産業技術センターにご相談ください。 機械技術部
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