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ページID:87148更新日:2018年12月5日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、担当Yが外部の方の目線を
大切にしながら、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
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今回のTOPICは、ワインの仕込みの様子と、ワインに関連した研究のご紹介です。山梨県といえば、『ワイン』とイメージされる方も多いのではないでしょうか。そんな山梨県の地場産業の一つである『ワイン』産業について、産業技術センターで醸造しているワインの仕込みの様子とワイン産業の振興のため取り組んでいる、研究開発をご紹介します。 |
ワインの仕込み作業 |
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Y.今回は、先日甲州市のワイン技術部で行われたワインの仕込み作業について、ワイン技術部の恩田部長にお話をお聞きしたと思います。よろしくお願いします。 恩田部長(以下:恩).よろしくお願いします。 Y.たくさんのブドウがありますね。今日はこのブドウで仕込みをするんですね。このブドウは何の品種ですか。 恩.これは『甲州』という品種で、山梨県の代表的なブドウの一つです。ワイン醸造だけでなく、生食用としても栽培されています。これらは、甲州市の農家さんで作られたブドウで、研究の原材料として購入しています。
恩.これらのブドウを圧搾機に入れていきます。今回はブドウの量が多いので、少しブドウを押しながら詰めていきます。 ー圧搾機へブドウを入れていきますー Y.どのくらいの量を入れるんですか。 恩.今回は300kgです。
恩.ブドウを圧搾機に入れた後、蓋をして、ブドウを圧搾していきます。圧搾機の中に、空気圧で膨らむバルーンがあって、それが膨らむことでブドウが潰されて、圧搾機の下の方から果汁が出てきます。 ー果汁がでてきましたー Y.いい香りがしますね。これだけで美味しそうです。 恩.搾った果汁は10分ごとにサンプリングして、酸度やpHなどを分析します。 ー果汁をサンプリングしますー Y.圧搾の過程でも分析をしているんですね。
恩.これはまだ途中ですが、ブドウを搾った後の圧搾機の中はこのような状態です。 ー圧搾機の中を見せてもらいましたー Y.なるほど。だいぶ容積が減りましたね。確かにブドウの粒が潰れています。 恩.おおよそ3時間かけてブドウを搾ります。あとはできた果汁をタンクに詰めて発酵工程に入ります。 発酵工程でも定期的にサンプリングを行い、発酵具合を確認しながら、ワインを醸造していきます。 Y.今回は『甲州』の仕込み、ということですが、年間何回くらい仕込み作業をするんですか。 恩.仕込みの方法はさまざまありますが、圧搾機を使う仕込みは、今年は8回行う予定です。また、仕込むワインの種類は、毎年醸造している『山梨ワイン』のほか、研究用のワインとして約30種類のワインを仕込む予定です。ブドウの品種もさまざまで、甲州以外に、マスカット・ベーリーA、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを使ってワインを醸造します。 Y.ほんとうにたくさんの種類のブドウを醸造するんですね。
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ワインに関連した研究開発 |
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Y.さて、研究という話が出てきましたが、ワイン技術部ではどのような研究を行っているんですか。概要を教えてください。 恩.昨年度(平成29年度)は三つの研究テーマに取り組みました。 一つ目は「早期収穫果からのスパークリングワイン製造実証試験」です。この研究は、農林水産省の補助事業に採択された「日本ワインの競争力強化コンソーシアム」の一課題として取り組んでいるテーマです。この研究では、摘房されていた早期収穫果に着目し、酸度が高いブドウ果実からのスパークリングワインの製造実験を行っています。この研究は、今年度(平成30年度)継続して取り組んでいます。 Y.コンソーシアムはどのように構成されているんですか。 恩.国の酒類総合研究所が中心となり、山梨県、長野県、北海道の大学や公設試験研究所、民間企業で構成されています。山梨県では、当センターのほかに、果樹試験場、山梨大学、ワイン酒造組合が参画しています。 Y.産学官連携、広域連携の研究ですね。
恩.二つ目は、「東京オリンピック2020各種イベントにおける祝杯酒としての山梨スパークリングワインの開発」です。この研究では、山梨県産のロゼスパークリングワインの製造方法の確立に向けて取り組んでいます。これまでに研究開発した白のスパークリングワインと合わせて紅白のスパークリングワインとして打ち出していきたいと考えています。この研究も、今年度(平成30年度)継続して取り組んでいます。 ーロゼスパークリングワインー
恩.三つ目は、「甲州ワインの色調制御に関する研究」です。この研究では白ワインが意図せずにピンク色に着色してしまう「ピンキング」現象の予期方法と予防方法について検討しました。ワイン試料に過酸化水素水を加えることでピンキングを予期できること、潜在的にピンキングの要素をもったワインに対して、一般的な清澄剤であるPVPPやベントナイトでの処理が有効であることを確認できました。 (清澄剤:ワイン内の浮遊固形物を吸着させて沈殿させる効果のあるもの) また、本年度(平成30年度)は新たに「甲州ワイン高品質化のための各種醸造技術の検証」にも取り組んでいます。この研究では、めざましい高品質化を遂げている甲州ワインについて、さらなる高品質化を図るため、従来から行われている各種醸造技術の検証による最適化や新規技術の適用について検討します。 Y.新たなワインの開発や従来ワインの高品質化に関する研究ですね。 (平成29年度に実施した研究の詳細は研究報告ページをご覧ください)
恩.日本ワイン、山梨ワインは最近注目を集めていて、海外への輸出も増えてきています。そのような中でさらにその需要を拡大していくには、ワインの品質の向上やバラエティの豊富さが必要です。各ワインメーカーさんで行っているさまざまな製品開発を当センターでも支援していきたいと思っています。 Y.日本ワイン、特に山梨ワインがより世界に広まっていくといいですね。 恩.これらの研究成果を業界に普及し、多くの皆様に活用していただき、山梨のワインの高品質化や新たな製品開発につなげていただければ嬉しいです。
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まとめ | ||
山梨県の特徴的な地場産業の一つである『ワイン』に関する内容をご紹介しました。今は、機械電子業界だけでなく、地場産業の業界においても品質への要求が高くなっています。品質の管理や製品の高品質化は大変なことも多いですが、"より良いものを消費者に届ける"ことは日本人が得意な分野だと思います。センターにおいても、施設整備や研究開発によってそれらの支援体制を強化していきますので、ぜひご活用ください。 |
研究員紹介 恩田匠(ワイン技術部部長(主幹研究員)) 抱負など「山梨県産業技術センターの研究成果が、県産ワインの高品質化につながればうれしいと思います。」 |