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ページID:112681更新日:2024年3月14日

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産業技術センタープロポーザル

【山梨県産業技術センタープロポーザル】

産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などを紹介します。

TOPIC:【研究成果事例紹介】洗える和紙ができるまで

 

今回のTOPICは、山梨の伝統産業である和紙に関する研究成果事例の紹介です。

洗える和紙の開発秘話について、化学・燃料電池科の芦澤主任研究員が関わった部分を中心にお伝えします。

 

洗える和紙開発のきっかけ

研究で取り組んでいた「セルロースナノファイバー」に関する情報提供を行う中で、身延町にある和紙製造の(有)山十製紙の笠井社長とお話をする機会がありました。

その話の中で、ウミガメの鼻にストローが刺さったニュースを見た笠井社長から、紙製のストローをつくれないかと提案いただいたことが開発のきっかけとなりました。

 

開発の課題

一番の課題は「水に強く」かつ「水を弾く」という特性を「天然素材だけで」達成することでした。

その実現に「セルロースナノファイバー」が有効ではないか?と思い、検討・試作を進めることとしました。

 

セルロースナノファイバーとは?

そもそも「紙」は植物由来のパルプを原料として製造されています。このパルプの主成分が「セルロース」という物質で、「セルロース」をナノサイズまで細かくほぐしたものが「セルロースナノファイバー」といわれる材料です。環境に優しく、様々な産業に使用できるため、現在とても注目されている材料です。

 

乳化作用を利用したコーティング

「水に強く」、「水を弾く」和紙を作製するため、強度を上げるために“クエン酸とのり”、はっ水効果については“ロウ”の利用が有効ではないか?と、様々な資料等を調べながら、開発を進めました。

和紙の試作では、ロウをコーティングする段階で問題が生じました。ロウソクをイメージしていただければ分かるかと思いますが、ロウは室温では固体のため和紙に均一に塗りつけることが非常に困難な素材です。

そこでセルロースナノファイバーの乳化作用(水と油が混ざり合う状態)を利用することにしました。

乳化(液)  乳化(顕微鏡)

ロウとセルロースナノファイバーが乳化した状態(左)と顕微鏡写真(右) 

 

「水に強く」、「水を弾く」和紙の完成

一般的に、セルロースナノファイバーには物質を乳化させる作用があることが知られていますが、ロウに適用した事例は今までにありませんでした。

実際にセルロースナノファイバーをロウに混ぜたところ、乳化することが分かり、何度も試作を繰り返した結果、和紙に対してロウを常温でコーティングすることに成功し、「水に強く」かつ「水を弾く」和紙を完成させることができました。

この和紙を用いて、開発当時流行っていたタピオカティー用のストローなども試作しました。

撥水の様子

コーティングした和紙が水を弾く様子

 

洗える和紙を使った商品

ストローの他にも、イベント配布用のカップホルダーを作製しました。縄文土器の柄をあしらったものでとても好評でした。

私自身、このカップホルダーを1年ほど使用していますが、夏はカップの結露を吸収し、また、冬は断熱効果により熱い飲み物を入れても持ちやすくなることに気がつきました。毎日水洗いして使っていますが、耐久性についても問題がないことが確認できています。

ワシブル(ホルダー) 和紙素材

地元の竹炭を入れて文様が浮き上がるようにデザインしたカップホルダー(左)と素材(右)

 

洗える和紙のこれから

「水に強く」、「水を弾く」性質を付加することはできましたが、和紙自体が持つ燃えやすいという性質は変わりません。これは、廃棄の面で見るとメリットですが、インテリア用品など商品の幅を広げる面では改善しなければならない点だといえます。

 

最後にひと言

製品開発は、関わる人の情熱と思いが強ければ強いほど実現に近づくと思います。今後も役に立つ研究開発に取り組んでいきたいと思います。

 

このページに関するお問い合わせ先

山梨県産業政策部産業技術センター 
住所:〒400-0055 甲府市大津町2094
電話番号:055(243)6111   ファクス番号:055(243)6110

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