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ページID:102293更新日:2021年12月8日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
当センターでは、研究成果を円滑に企業に普及し、実用化へ繋げていくために、追試験・試作等を行う「フォローアップ事業」を実施しています。今回は、R1~R2年度に実施した「光吸収発熱保温製品の熱移動特性に関する研究」に関する追試験を行いましたので紹介します。
■フォローアップ事業実施の背景
近年、光を熱に変換する機能性繊維が注目されています。しかし、従来の機能性繊維はほとんどがポリエステルなどの樹脂系素材を使用しており、これらはすぐに冷めてしまうなどの課題がありました。学校やオフィスにおける新型コロナウイルス感染拡大防止のための換気時、飲食店のテラス席等における寒さ対策やアウトドア商品の需要拡大から、これまで以上に高機能な繊維材料の開発が求められています。
そこで、当センターはこの課題を解決すべく研究に取り組み、その結果、微量元素であるバナジウムの溶液を天然素材全般の染料へ添加することで、近赤外線に対して高い光吸収発熱保温性が得られることを明らかにしました。さらに、この技術における特許を取得(特許第6792108号)しました。
一方で、繊維集合体の熱移動メカニズムは非常に複雑であるため、想定される新製品毎に温熱快適性や実用性を評価する必要があります。
■追試験により県内企業の新商品開発を支援
令和3年2月17日より、県内企業にて9色の糸が製品化されています。この他、複数の企業から、マフラーや靴下、セーター、ひざかけ等が開発されています。しかしながら、繊維製品は実環境においては布を重ねた状態で使用されることも多く、重ねた状態での熱伝導特性の把握が必要となっていました。
そこで、4枚重ねにした3種の試料(バナジウム処理ウール、市販機能性ポリエステル、未処理ポリエステル)について、接触冷感性の比較を行いました。その結果、バナジウム処理ウールを重ねた試料はポリエステルの試料に比べて接触冷感性が低いことが確認されました。これは、触ったときにより温かく感じられるということを示しています。
これらの実測値を元に、さらに実環境での光照射時における、みかけの熱移動特性を評価しました。その結果、バナジウム処理によって波長1000 nm近傍の近赤外線を効率良く熱に変換することで、従来品では実現できない高い保温性を示すことがわかりました。
当センターにおける近赤外線照射による布帛の光吸収発熱保温性実験の様子
■担当からひと言
今回、重ね布試料の熱移動特性を評価することで、新製品実用化のための指標を得ることができました。当センターは、これからも県内企業の課題を適切に把握し、必要な技術支援の提供に取り組んで参ります。
これらの技術的知見を活用したい方など、ご興味のある方は担当までお問い合わせください。
・繊維技術部
0555-22-2100