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ページID:88724更新日:2019年3月20日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、担当Yが外部の方の目線を
大切にしながら、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
今回のTOPICは、富士技術支援センターに新たに導入された「超促進耐光性試験機」のご紹介です。耐光性試験というと、読んで字のごとく、製品などが光にどのくらい耐えられるか、変色などの変化が生じないか、を確認する試験です。では、今回紹介する“超促進”耐光性試験機は従来の耐光性試験機とどのように違うのでしょうか。そのような点を中心に、担当の尾形研究員にお話を伺いました。 |
超促進耐光性試験機 |
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Y.尾形さん、今回ご紹介いただく機器は何でしょうか。 尾形研究員(以下:尾).こちらの「超促進耐光性試験機」です。この装置は、平成30年度の公益財団法人JKAの補助事業(競輪の補助金)により整備しました。 Y.JKAの補助事業ではこれまでもさまざまな機器を整備させていただいています。整備した機器は補助事業による新規導入設備のページでご紹介しています。 Y.❝超促進❞とはすごいですね。従来の耐光性試験機とはどのように違うのですか。 尾.一番の違いは光源です。センターで保有している従来の耐光性試験機の光源はキセノンランプであるのに対して、超促進耐光性試験機の光源は、紫外線領域の光のエネルギーが強力なメタルハライドランプです。紫外線領域の光はプラスチックの変色や劣化などに大きく影響するので、屋外暴露試験を短期間で再現することができます。 Y.なるほど、そういうランプがあるんですね。実際にどのくらい促進されるのですか。 尾.光の種類が違うので、比較するのは難しいのですが、紫外線領域の光の強さで比較すると、キセノンランプの耐光性試験機(当センターに設置されている従来の耐光性試験機のなかで紫外線領域の光のエネルギーが最も強い耐光性試験機)の場合、20日ほどの試験が1年間の屋外暴露試験に相当するとされています。それに対してメタルハライドランプの超促進耐光性試験機の場合、5日ほどの試験が1年間の屋外暴露試験に相当します。ただし、これはあくまでも目安で、試験サンプルの素材や試験条件によって異なります。 Y.これまでよりもかなり短期間で試験ができますね。 尾.現在、この装置を使ったプラスチックの光による劣化についての研究にも取り組んでいます。 -プラスチックが変色しています-
尾.左から厚さ1mmのアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、厚さ1mmのポリプロピレン(PP)、厚さ1mmのポリカーボネート(PC)、厚さ3mmのABSです。超促進耐光性試験機で、紫外線領域の光の強さ(照度)を1,500W/m2として100時間の照射試験を行った前後の様子です。 Y.かなり色が変わっていますね。 尾.樹脂製品は光によってこのような現象が起きるので、企業の皆様はどのくらい耐久性があるか、確認されているんです。品質評価の重要な項目なんです。 Y.どのように試験を行うんですか。 尾.こちらの試料台に試料を置き、試料台を試料室内にセットします。試料室の上側に水平についているメタルハライドランプを照射して試験を行います。
Y.試験自体は、特に難しい作業などはなく、試験できそうですね。
尾.企業の皆様も簡単にご利用いただけると思います。
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耐光性試験機 |
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Y.比較対象として、従来の耐光性試験機も簡単に紹介いただけますか。 尾.わかりました。まずこちらが機械電子技術部で管理する耐光性試験機です。 -装置情報は設備紹介ページをご覧ください-
尾.もう一台が、こちらの繊維技術部が管理する耐光性試験機です。こちらも先ほどの装置と同じように光源がキセノンランプで、繊維関連のJIS規格に沿った耐光性試験を行うことができます。先ほどの装置との違いは、ランプが試料室の中央に垂直に立っており、その周りをサンプルホルダが回転します。今、試験中で、窓から見える樽の側面のような部分がサンプルホルダで、サンプルホルダの内側に試料が固定されています。繊維の耐光性試験ではこのような機構が必要です。 -装置情報は設備紹介ページをご覧ください-
Y.ありがとうございました。超促進耐光性試験機では、JIS規格という話がありませんでしたが、そのあたりはどうでしょうか。 尾.今の時点(平成30年度)では、メタルハライドランプを使用した耐光性試験についてはJIS規格などで試験機が規格化されてないんです。ですので、製品の最終的な試験などで、特定のJIS規格に対応した耐光性試験を行いたい場合には、今紹介した従来の耐光性試験機をご利用いただければと思います。研究開発などで、JIS規格などの規格に沿った試験ということではなく、短期間で製品評価、例えば複数サンプル比較などを行いたい場合には、超促進耐光性試験機をご利用いただければと思います。目的に応じて適した装置をご利用いただければと思います。 Y.なるほど。目的によって適した装置が違うということですね。 尾.これまでも製品開発で耐光性を評価したいというご相談も多くありました。試作や開発段階では、時間やコストという点も重要ですので、従来の耐光性試験機だけでは対応しきれていませんでした。新たに導入された超促進耐光性試験機により、企業の皆様の製品開発、素材開発を支援できればと思います。 Y.尾形さん、本日はありがとうございました。 |
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まとめ | ||
今回は、富士技術支援センターに導入された超促進耐光性試験機をご紹介しました。耐光性試験は、プラスチックや自動車部品、繊維製品などで重要な評価項目です。超促進耐光性試験機は、短期間で製品や素材の耐光性の評価ができる点が特徴です。ぜひ、ご利用ください。 |
研究員紹介 尾形正岐(機械電子技術部機械電子科研究員) 抱負等 |