トップ > 組織案内 > 山梨県産業技術センター > 山梨県産業技術センタープロポーザル > 山梨県産業技術センタープロポーザルH29.12
ページID:83488更新日:2018年9月20日
ここから本文です。
【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、担当Yが、
外部の方の目線を大切にしながら、その分野の専門知識のない方でも抵抗なく読めるように、
センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
今月のTOPICは、今年新たに取得した特許権『ジャカード織物パターンの生成法、装置およびプログラム』のご紹介です。
産業技術センターでは、研究員が日頃研究や技術支援を行っており、その成果として得られた発明などについて、特許権などの知的財産権を取得しています。今回取得した特許権は、山梨大学との共同研究から得られた成果です。郡内(富士北麓・東部地域)の繊維産業で使われている一つの技法にジャカード織りがあります。ジャカード織りは、たて糸とよこ糸を一本単位で制御し、織物上に自由度の高いデザインを表現でき、写真などの画像データを織物上に再現することもできます。今回、特許となった技術は、画像の再現において、これまで再現が難しかった自然なグラデーションをより細やかに表現することができる技術です。 この技術を活用することで、どのようなことができるのかなど、富士技術支援センター繊維技術部の五十嵐リーダーに聞いてきました。 |
特許『ジャカード織物パターンの生成法、装置およびプログラム』 |
||
|
Y.ジャカード織物というのは耳にしたことはあるのですが、実際にはどのような織物なんですか? 五十嵐リーダー(以下:五)ジャカード織物は、ジャカード織機を用いた織物のことです。ジャカード織りではたて糸とよこ糸が交差するパターンを一本単位で操ることによって、複雑な絵柄を織物上に表現することができます。郡内(富士北麓・東部地域)織物の特徴である先染めを活かす技法の一つとして、活用されています。 Y.これがジャカード織機ですね! 五.はい。これがジャカード織機です。たくさんのピンク色の糸が見えますが、それぞれ一本ずつが11,520本のたて糸につながっていて、一本一本制御することができるようになっています。 Y.では、今回登録された特許について教えていただきたいと思います。『ジャカード織物パターンの生成法、装置およびプログラム』は、どのようなものですか? 五.簡単に言いますと、ジャカード織物でこれまで表現が難しかった、グラデーションやぼかしを活用したモチーフの再現を可能にし、よりきめ細やかな階調表現を可能にする技術です。 Y.織物での再現がより精細にできるようになった、ということですね!! 五.今回の発明は、すでに特許登録されている『ジャカード織物の製造方法』をもとに、山梨大学の茅教授、豊浦准教授との共同研究から生まれた改良技術ですので、前回の特許から説明しますね。 前回の特許は、デジタルカメラなどの画像データをコンピュータで画像処理して、どのようなパターンで糸を交差させればよいか決め、微妙な陰影を生地上に表現する製造方法の特許です。 これが、前回の特許技術で作成した織物の組織パターンです。 Y.これはさっきのジャカード織機の写真ですね! 五.そうです。この画像は白と黒だけでできています。糸の交差の仕方には、たて糸が上か、よこ糸が上か、の二通りしかないので、織物の織り方は白と黒の二値の画像データで表すことができるんです。そのパターンの違いでもとの写真を再現しています。 元の画像データを、織物に適したパターンで再現できるようにした方法、仕組みがこの特許です。 |
|
|
||
Y.なるほど。前回の特許もすごいですね。では、今回の特許の説明をお願いします。 五.前回の特許技術で課題だったのが、グラデーションの表現です。画像のなかで同じような明るさが広がったところでは、同じパターンの繰り返しとなってしまう部分があり、元の画像にはない、規則的なパターンが生じてしまっていました。 たとえば、下の二つの画像のうち上側の図のような感じです。規則的に黒や白の濃い部分が見えるのがわかると思います。今回の発明では、この現象を避けるため、ランダムとなる仕組みを開発しました。下側が、その結果です。 Y.本当ですね。上の図は定期的なパターンが出ていますが、下の図からはなくなっていますね。 五.はい、これが今回の特許となる技術の一つです。 ランダムになるようにしても、織物の組織パターンを損なわないように配慮しているところが、この技術の大事なポイントです。 また、細かい変化がある部分では、ランダムさを加減する処理方法も開発しました。 Y.ランダムさと細かさの両立ですね!! 五.そうですね。その点については、この特許ではもう一つのアプローチの手法も含まれています。 Y.どのような手法ですか。 五.「拡張誤差拡散法」と名付けられた手法なんですが、この手法では細かいエッジや細い線でも、忠実に再現できる効果があります。従来手法と比較した下の図を見てください。一番下の段の写真は、眉の部分を拡大してみたものです。
Y.本当だ、眉毛の細い線が、ちゃんとつながって見えますね! Y.ありがとうございました。この技術を活用することで、本当に表現したい画像を時間をかけずにイメージ通りに作成できますね。 五.では最後に、さっきの眉毛で比較した画像を、織物組織として織ったところを見てみましょう。 Y.糸でできた写真のようですね! 五.はい、ぜひ企業の皆さまの製品開発にこの技術をご活用いただきたいと思います。 Y.今日はありがとうございました。
|
||
まとめ | ||
今回は産業技術センター保有の特許権をご紹介しました。他社と差別化した製品開発には、新たな技術を活用することが有効です。産業技術センターでは今後も企業の皆様に活用いただける技術開発に積極的に取り組んでいきますので、ぜひご活用ください。 今回ご紹介した特許の他にも、センターが保有する知的財産権はありますので、多くの皆様にご利用いただければと思います。 |
研究員紹介 五十嵐哲也(富士技術支援センター繊維技術部技術支援科(主任研究員)) 抱負等「山梨の織物産業は、自動織機で織られていますが、クラフトといっていいくらいに人の手が必要とされる繊細な工程に支えられています。その背景にあるのは、品質の良いもの、美しいものを送り届けようという職人の高い意識です。県として、その価値を最大限に引き出せるような支援をしたいと心がけています。」
|