印刷

ページID:120240更新日:2025年3月28日

ここから本文です。

遺跡トピックスNo.0547 谷村陣屋から出土した錘

           metal weight

 上の写真は甲府地方裁判所都留支部で行われた発掘調査において出土した、棹秤による計量で用いた錘です。錘は谷村陣屋に設けられた水路から発見されました。なぜ陣屋から錘が出土したのでしょうか。

 谷村城は山梨県東部地域を治めるために築かれた江戸時代の城で、現在の都留市役所及び谷村第一小学校付近に位置していたと推定されています。甲府地方裁判所都留支部は、谷村城下町における武家屋敷の一角に位置します。

 慶長5年(1600)に鳥居氏、寛永10年(1633)から宝永元年(1704)まで秋元氏が山梨県東部地域を治めた後、宝永2年(1705)3月23日から関東代官町野惣右衛門と清野与右衛門が谷村に入って政務をとることになりました。この際に家臣屋敷を壊して田畠とし、谷村城を崩して溝や池を埋めましたが、高山甚五兵衛の屋敷だけを残して陣屋として用いたと記録に残されています(『甲斐国志草稿』)。現在の甲府地方裁判所都留支部は谷村陣屋が設けられた場所に該当します。

遺跡名:谷村城

所在地:都留市中央

時代:奈良・平安時代、中世、近世、近代

報告書:山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第311集、2017(平成29)年

調査機関:山梨県埋蔵文化財センター

谷村陣屋にあった水路

 江戸時代の谷村陣屋を描いた複数の絵図が確認されています。『城跡地地割図』[享保10年(1725)]と『下谷村屋敷割絵図』[天保15年(1844)]を比較すると、『城跡地地割図』には谷村陣屋の敷地に建物1棟と西南門が描かれたのに対し、『下谷村屋敷割絵図』には陣屋1軒・長屋3軒・祠2基・水路・西南門・北西門などが表現されています。

 『城跡地地割図』には、家中川の支流と考えられる水路が屈曲しながら南西から北東方向に走っているのに対し、『下谷村屋敷割絵図』では、西南門の手前で2つに分流し、西側の流路は陣屋建物にあわせて直角に折れ曲がり、東側の直線的な流路に合流します。谷村陣屋内に流れる水路は18世紀段階では屈曲する形状であったものが、19世紀段階には東西2つに分かれ、敷地内で合流する形状であったと考えられます。

 甲府地方裁判所都留支部の発掘調査では、18世紀段階の水路が19世紀以降の遺構に壊されながら部分的に確認され、冒頭で紹介した錘は水路の一部を構成した7号溝状遺構から出土しました。このため、錘は18世紀段階の谷村陣屋に伴う資料と考えられます。

谷村陣屋と「秤改め」

 棹秤は希少材・金属精錬や課税対象の計量や商取引を行う際に用いられました。天正10年(1582)、北条氏との天正壬午の戦いに勝利した徳川家康は、武田家の元で秤の製造を任された守随家に甲州金の秤に係わる特権を与え、承応2年(1653)には東三十三ヶ国は守随家、西三十三ヶ国は神家が秤の販売を行うこととなりました。守随家の特権は秤の製造・販売にとどまるものではなく、東三十三ヶ国で使用された秤に不正なものがあるか改める「秤改め」がありました。

 「秤改め」は守随家や名代のもと、10名程度が改役として現地に赴き、秤改御用場を開設して棹秤の検査を行うものです。秤改御用場には「御秤改所」などと記した掛札を下げて幕を巡らし、秤改めに際しては町村の町年寄・村の名主を集めて下座に座らせ、「徳川家康朱印状」などを読み上げて自らの権威を示しました。

 さて、ではなぜ谷村陣屋から棹秤の錘が出土したのでしょうか。陣屋の機能である聴訟(民事裁判)、断獄(刑事裁判)を行う際の必須の物品ではなく、谷村陣屋の備品を記した『谷村御陣屋附郡中懸諸道具取調書上目録』には棹秤の記載はありません。

 『甲府町方并寺社諸品申送帳』によると都留郡は山梨・八代・巨摩と異なり、郡内御役所すなわち谷村陣屋から書付が渡され、村々への廻状も谷村陣屋から出されました。谷村陣屋から下谷村以下、十一ヶ村に宛てられた廻状には東部地域の秤改御用場として上野原宿・猿橋宿・初狩宿・谷村の4ヶ所が記載されています。秤改めにおける谷村陣屋の積極的な係わり方や秤改役が求めた権威的な場を想定すると、谷村の秤改御用場は谷村陣屋に設けられた可能性があります。

 

次の遺跡トピックスへ|遺跡トピックス一覧へ一つ前の遺跡トピックスへ

山梨県埋蔵文化財センタートップへ

このページに関するお問い合わせ先

山梨県観光文化・スポーツ部埋蔵文化財センター 
住所:〒400-1508 甲府市下曽根町923
電話番号:055(266)3016   ファクス番号:055(266)3882

同じカテゴリから探す

関連ページをもっと見る

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

このページを見た人はこんなページも見ています

県の取り組み

pagetop