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ページID:4519更新日:2017年6月2日
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花鳥山遺跡は甲府盆地の南側、御坂山塊北麓の丘陵・花鳥山の緩やかな斜面上にあります。山梨県内でも古くから知られていた遺跡の一つで、明治27年に発刊された『山梨懸市郡村誌』に花鳥山は古戦場として紹介されていて、槍や刀などとともに土器が出土する場所であると書かれています。
本格的調査は昭和23年(1次)、昭和29から30年(2次)、昭和62年(3次)の計3回行われており、昭和62年の調査では縄文時代前期(約5,000年前)の竪穴住居跡24軒、土坑33基などが発見されています。 花鳥山遺跡で見つかった竪穴住居跡(縄文時代前期)
所在地:笛吹市御坂町竹居・八代町竹居地内 時代:縄文時代早期・前期 報告書:山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第45集1989(平成1)年刊 山梨県埋蔵文化財センター 縄文時代前期の住居跡から発見されたエゴマ種子3次調査でみつかった縄文時代前期の竪穴住居跡の中からは、土器や石器などの遺物とともに、住居の床上から複数の種子が約2×1.5cm大の塊となった状態で出土しました。種子の塊を顕微鏡で詳しく観察したところ、100粒以上のエゴマの種の塊であることがわかりました。 写真左花鳥山遺跡から出土したエゴマ種子の塊 写真右現生のエゴマ種子
エゴマはシソ科の植物で、インドや中国中南部が原産地とされ、日本では縄文時代前期の遺跡から出土する例が多くみられることから、このころ日本に伝わったと考えられます。現在、エゴマの種子や葉は食料として用いられており、縄文人もエゴマを食していたと思われます。
また、種子には油性の成分が多く含まれているため、日本では菜種油が普及するまでは、エゴマから採った荏油(えあぶら)を明かり用の油として利用してきました。この荏油は灯火用だけではなく、漆の精製の際の混和剤としても利用され、平安時代の書物『延喜式』には漆器製作の際に漆の樹液と荏油を混合するという記載があり、その混ぜ合わせる割合まで規定されています。
縄文時代前期には、漆を使用していた例が全国で多くみられ、山梨県でも北杜市の甲ツ原遺跡や天神遺跡などから漆で文様を描いた土器が出土しています。 北杜市甲ツ原遺跡から出土した漆彩文土器(縄文時代前期)
これらの漆に荏油を使用していた確実な例は現在までみられませんが、縄文時代前期には食用としてだけでなく、漆塗りにもエゴマが使用されていたかもしれません。
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